お母さん

 お母さん?
 どうしたの、ぼけっとして

 え? あ、ごめんね
 お庭のひまわり見てたの

 僕、入ってくるとき ただいまって言ったのに

 おかえり、そら
 よしよし いい子いい子

 もう、やめてよ
 四年生にもなって 帰るたびにいい子いい子されてたら
 はずかしいよ

 え、そう?
 お母さん、そらが中学に行っても
 高校に行っても ずっと撫でていたいよ

 だから、やめてってば

 そら、おばあちゃんに撫でられるのも恥ずかしい?
 おばあちゃんもお母さんも
 そらが本当にかわいいと思ってるのよ

 うーん、でもちょっとはずかしい

 おばあちゃんみたいに いい子いい子してあげようか
 ほら、おっぱいむぎゅって

 でもお母さん、むぎゅっていうほど大きくないよね?

 がお
 どうしてそんなこと言うかな……。
 このおっぱいで大きくしてあげたのに

 ……
 ねえ、僕に弟か妹はできないの?

 う〜ん
 できないと思うよ
 そらのお父さんが戻ってくれば別だけど

 お父さんがいないとだめ?
 お母さんだけじゃできない?

 うん、できない

 お父さんはどこ行ったの?

 お父さんはねえ……
 鳥になって飛んでいったの
 私の代わりに空に行ってくれた
 苦しんでいた私を見て 助けてくれたの

 お母さんを助けたの?
 どうやって鳥になれたの?
 どうして助けたのに空から戻って来ないの?

 どうやったか知らないけど……
 鳥になってからお母さんのところに来たんだよ
 もう私は空に行かなくていいから
 もう心配しなくていいからって

 お母さん、空に行くつもりだったの?
 何か空に心配ごとがあったから?

 お母さんは……
 自分でもよく分からないの
 ただ、急に空に行かないといけない気がして
 会わないといけない人が 伝えないといけないことが……
 気がついたら羽が生え始めてて……

 ……

 ごめんね、そら
 お母さん変なこと言ったね 忘れてちょうだい

 うん 僕のどかわいたな

 麦茶があるからちょっと待っておいで
 あ、そうそうひまわりにもお水をあげてくれる?
 朝あげたけど、今日は暑かったから
 もうのどがかわいてると思うの

 いいけど
 あのひまわりって茶色っぽいよ
 もうすぐ枯れるんじゃないの?

 でもお母さん、この季節のひまわりが一番好き
 花の盛りは過ぎたけど しっかり種がなって
 茎が折れて倒れるときは
 子どもが元気に飛び出すときなの

 種、見たい?
 切って来ようか?

 まだ切らないで!
 ――切るときはとても痛いときだから

 う、うん
 分かった

 今だけそっとしておいて
 できれば折れて倒れるまで





ドーデンさんにリクエストした詩です。
とっても暖かくて温もりの感じられるよい詩に仕上がってて大満足です
流石ドーデンさん!
ちなみにリクエストは「向日葵」ッて感じの「ひまわり」
また無理難題を・・・汗
つまりしっかりしたイメージでありつつ、固くなりすぎず・・・
そんな詩を求めてみたんですが上手く行ってるのがすばらしいです!
実は今回は詩の交換をしましょう!ってことでリクエストしあったんです
ドーデンさんのリクは「雪国」だったので、それはまた別にみてください(笑


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